（1）緊急点検チェックリストの目的
・第1章3（1）に記載したとおり、地震発生後、被災した学校施設の危険度を速やかに判定することが重要な課題であり、特に屋内運動場等については、被災後の教育活動や応急的な避難場所としての使用において、吊り天井の落下被害の拡大による二次災害が生じることのないよう、未然防止を図っていく必要がある。
・東日本大震災においても、本震で一部しか被害を受けなかった屋内運動場の吊り天井が余震で全面崩落した事例があり、さらに、直近の地震被害では震度5強程度の中地震でも吊り天井が落下した事例があった。
このため、児童生徒等の安全確保及び二次災害防止の観点から、中地震以上の地震発生後、学校設置者は、とりわけ、吊り天井のある屋内運動場等については、迅速かつ的確に被害状況等を把握するための安全点検を緊急的に実施することが必要である。
・本章で示す緊急点検チェックリストは、地震により被災した学校の吊り天井のある屋内運動場等の安全点検を実施するためのものであり、学校設置者（施設担当の技術職員）が外観又は内観から目視で確認できる範囲で施設の被災状況を確認し危険性を判断することができるよう作成したものである。
なお、本チェックリストは、応急危険度判定士による判定においても関係資料として活用することができるものである。
・緊急点検すべき学校施設を多く保有している学校設置者においては、被災直後において教育委員会等の施設担当の技術職員が直ちに対応することが困難な場合が想定されるため、あらかじめ建築担当部局や設計実務者等の専門家との連携について協議し、被災時の緊急点検実施者を決めておくなどの対応も考えられる。
（2）緊急点検チェックリストを活用する上での留意点
・緊急点検チェックリストによる点検は、被害を生じさせた地震の直後に短時間に判定するものであり、判定に必ずしも十分な調査検討がなされないため、後に十分な時間をかけて被害調査が行われた場合に判定結果が異なる場合があることを考慮する必要がある。
・本緊急点検はあくまで外観又は内観上明らかになっている被害から危険性を判断することを目的とし、主要な点検項目を示したものである。
これらの確認結果において危険性を確認できたものは、その後の使用に対して注意を要するものであると判断できるが、確認結果において被害が見られない場合、当該施設の健全性を保証するものではなく、恒久的な使用を保証するものではないことに注意する必要がある。
・屋内運動場等の吊り天井について、落下防止対策がなされていないものについては、そもそも地震による落下危険性が高いことを十分に考慮する必要がある。
このため、被災後の緊急点検に当たっては、吊り天井の耐震点検の結果を踏まえ、「対策済み」「対策がなされていない又は未点検」であることも併せて考慮する必要がある。
・避難場所としての使用の可否については、本緊急点検の結果も参考にしつつ、現地災害対策本部等が詳細に検討を行い、より慎重な判断を行うことが必要である。
